はじめに
経営の相談を受けていると、「売上は上がっているのに、なぜかお金が残らない」という声をよく聞きます。
実はこの悩み、会社の大小に関係なく、多くの経営者が抱えている問題です。
その原因の多くは、“利益”と“お金の流れ”を混同してしまっていることにあります。
会計上の利益は黒字でも、資金繰りが苦しい会社は少なくありません。
反対に、利益がそれほど大きくなくても、安定した資金繰りを維持している会社もあります。
経営の安定とは、まさに「お金の流れを理解しているかどうか」で決まるといっても過言ではありません。
利益とお金の流れは違う
決算書の「損益計算書」に表示されるのは、あくまで一定期間の“利益”です。
一方で、「資金繰り」とは実際に“お金が入って出ていく流れ”のこと。
この二つは異なるものです。
たとえば、売上を計上しても、入金が2か月後であれば、その間の資金は動きません。
また、設備投資で一度に大きな支出をすると、利益以上に現金が減ることもあります。
この違いを意識して日々の資金管理を行うことで、急な支払いにも慌てず対応できる経営体質がつくられます。
資金繰りの第一歩は「見える化」
資金繰りを安定させるための第一歩は、“お金の動きを把握すること”です。
最も基本的で効果的なのが、資金繰り表を作成することです。
資金繰り表は、イメージとしては、毎月の「入金予定」と「支払予定」を一覧にしたもので、期首の現預金残高に入出金を足し引きして、月末にいくら残るかを把握します。
シンプルに言えば、
期首現金残高 + 差引収支 = 月末現金残高
という関係を理解しているということです。。
会計ソフトでなくても、エクセルなどでも簡単に作成できますし、経営者自身が“感覚的に理解できる表”の方が役立ちます。
数字を毎月見ていくうちに、「来月の支払いをどう乗り切るか」「今のペースで資金は持つか」といった感覚が自然に身についてきます。
経営者が押さえるべき3つの視点
資金繰りを安定させるには、次の3つの視点が欠かせません。
1.入金と支払いのタイミングを意識する
売上が立っても、入金が遅ければ一時的に資金は減ります。
支払いサイトを把握し、入金とのズレを埋める意識を持ちましょう。
2.毎月の固定費をつかむ
家賃・人件費・リース料など、必ず出ていくお金を明確にしておくこと。
“最低限必要なお金”を知ることが、安心感につながります。
3.将来の投資支出を見越す
設備購入や人員増強などの支出は、事前にシミュレーションを。
「今は大丈夫」でも、数か月先に資金が足りなくなるケースは少なくありません。
まとめ
経営における「お金の流れ」を正しく理解することは、会社を長く続けていくうえで欠かせない要素です。
数字が苦手な経営者であっても、資金繰り表をつけることで“現預金の動き”をつかむことができます。
資金繰り作成にあたっての主なポイントは、「見える化」と「タイミングの管理」です。
お金の流れが読めるようになれば、経営の判断も早くなり、会社の安定につながります。
利益よりもまず、“現預金を切らさない”ことを第一に考える姿勢が、経営の基本なのです。
ひとこと
資金繰りを安定させるコツは、「先を読む習慣」を持つことです。
1か月先・3か月先を見越した計画を立てておけば、突然の出費にも慌てず対応できます。
数字を見ることは、未来を考えること。日々の経営にぜひ取り入れてみてください。
※本記事は一般的な経営情報の提供を目的としています。
内容は筆者の見解に基づいており、特定の経営判断を推奨するものではありません。